(洛星中高にて保護者会に来られた保護者の皆さんに配布したパンフレットから)
中高一貫教育の功と罪
皆さんご存知のとおり、中高一貫校においては指導要領からはずれた教材と進度で各科目の授業を進めるのが普通です。
【洛星の場合】
洛星においても、例えば英語は本来なら中学3年間を通して終わらせるべき学習範囲を、New Treasureというテキスト(本来は副教材扱いのはずです)を主体に中1・中2の間にわずか2年で終わらせています。
中3になると、通常は高校1年生で使用するELEMENTⅠという教材を用いて高校レベルの勉強を開始します。
このペースで高2の終わりまでには大学受験に必要な知識の習得を終え、高3の一年間は丸々受験勉強を行なうことになります。
別の学校を見てみましょう。
【堀川高校の場合】
例えば堀川高校探究科の場合、適性検査を経て高校に合格し、その後の三年間で大学受験の準備をすることになります。
適性検査ではたしかに中学のレベルを越える高度な問題も出題されますが、それでも中学レベルの勉強が適性検査対策のベースになっているのは間違いありません。
適性検査合格(≒高校入学)の段階ではまだ中学レベルの勉強しか終わっていないにもかかわらず、その後わずか三年間の勉強で、堀川からは近年毎年40名以上の京大合格者を輩出しています。
これは適性検査で選抜される生徒全体の資質が高いということもありますが、高校入学直後からかなり早いペースで大学受験用の勉強を進めているのも一因です。
Vキャンパスには洛星や堀川以外にも多くの学校の生徒が在籍していますが、各学校の教材・進度を比べてみると、堀川の場合は特に、入学早々から大学受験を意識して学習指導を行なっているのがわかります。
潜在的資質の高い生徒を集めて入学直後から3年間休まずに鍛えを入れることによって、驚異的な大学合格実績が維持できていると考えてよいでしょう。
【中高一貫校の中だるみ】
一方、洛星をはじめとする中高一貫校の場合、六年間受験がないことから中だるみを起こす生徒が多く見られます。
たしかに中2や中3の生徒に「大学受験を意識しろ」と言ってみても無駄だとは思いますが、一般的な洛星高校生の場合、大学受験を意識して受験勉強を始動するのは概ね高2に入ってからでしょうか。
中高一貫校の場合、学校の進度についていければ問題なく高い学力をつけることが可能です。
Vキャンパスに在籍する洛星中高生の中にも、「この調子で順調にいけば必ず京大に間違いなく現役で合格するはずだ」と思わせる生徒は多いのです。
【問題は中高一貫校の授業ペースについていけるか否か】
しかし問題は、中高一貫校の生徒全員がこのペースの勉強についていけるかどうかという点です。
学校のペースについていける生徒は、学校の敷いたレールに従って楽々と大学受験をすることができます。
その一方で、このレールに乗れないあるいは乗り遅れる生徒が、残念ながらどの中高一貫校にも存在します。
そしてそれは洛星も例外ではありません。
無事中学に合格した後は、解放感からクラブに明け暮れ、勉強と言えば宿題を適当に片付ける程度、テスト期間以外はほとんどまったく勉強をしない生徒も相当数存在します。
結果、
- 学習習慣がまったくなくなり、
- 学校の進度についていけない、
ということになります。
英語力確保の必要性
【英語力推移グラフ】
これは洛星に入学した生徒と堀川に入学した生徒の英語力の推移をわかりやすく単純化したグラフです。
- パターン1は理想的な洛星の生徒の学力推移、
- パターン2は典型的な堀川の生徒の学力推移、
- パターン3は洛星の学力下位層の学力推移です。
デフォルメはありますが、今までの指導経験から見て洛星の生徒の中にもパターン3あるいはそれに近似する学力推移を示す生徒は残念ながら多いのです。
このグラフでは英語だけをとりあげてみましたが、なぜ英語を例として挙げたのでしょうか?
それは英語が大学受験においてほぼ必須の受験科目となっているからです。
センター試験をはじめ国公立二次試験においても、私大入試においても、英語が受験科目になっていない大学・学部はないと言っても過言ではありません。
また、英語が積み重ねの要素の強い科目だからです。
単語や文法の知識をコツコツと積み重ねていかなければ英語の上達は望めません 。
【パターン3ではまずいですよ】
パターン3のままでは正直困ります。
一刻も早く、パターン1に追いつくように努力をすべきです。
またパターン3ほど極端ではなくとも英語力に不安を抱える生徒さんには、単語力と文法力のチェックを行なってパターン1のグラフに近づく努力を、できるだけ早期に行なっていただくようお願いします。
英語は得意だと公言する洛星高校生の中にも、「先生、不定詞の用法ってなんでしたっけ?」と涼しい顔をして質問してくる者がいてがっかりさせられることがありますが、たとえそこそこの成績を保っていたとしてもこういう基礎力の欠けた状態では今後の学力の伸びは期待できません。
現在の英語力に不安があるなら、パターン1とのギャップをできるだけ早期に埋めてあげることです。